間もなく妻は、普段とは違う短いコートを着て寝室から出てきました。
「もう時間だから… 行ってくるね…」
それは消え入るように微かな声でした。由香里は顔を伏せ、私を見つめようとしません。私は黙ったまま小さく頷きました。
彼女にとって、時が近づくと共に込み上げる罪悪感と、不貞にまみれた眩い恍惚への期待の狭間から逃れるには、一刻も早く家から出る他は無いのです。
「キッチンのテーブルに今夜の御飯を置いてあるから… 時間が無くて簡単なものしか作れなかったけど…」
由香里は岩崎と会う間際まで、妻としての家事を果たそうとしていたのでしょうか。私は思いがけない言葉に驚きを感じました。
他人と性交渉をするために出かける準備をしながら、その帰りを待つ夫の食事を用意するなんて…
妻にとって、それはあまりに残酷な務め苦だった筈です。彼女なりの贖罪の気持ちからなのか、自分自身に対する苛責を少しでも和らげようとしたのか、私には推し量る術がありません。
私にとっては、キッチンに用意された食事が痛々しいものに思えたのです。
玄関のドアを開ける妻の後ろ姿を、私は慈悲と愛しみの目で見つめました。
愛する妻が他人に寝取られることを承知の上で見送るなんて…
元はと言えば、私の身勝手な願望が全ての始まりなんだ…
ドアから差し込む外の光が由香里の輪郭を浮かび上がらせると、やがてその扉は彼女自身の手によって静かに閉ざされました。夫としてかける言葉も見つからないまま、妻は私の手から岩崎の元へと委ねられたのです。
彼女にとって、岩崎と愛し合う二人の時間は、私だけの妻から一人の女に戻る一夜を与えてくれる筈です。精悍で猛々しい茎で貫かれながら、私からはでは得られない性の悦びに身悶えることでしょう。
それは夫である自分にとって、叶えられない恋に打ちひしがれるよりも、遥かに辛くて苦しい虐げに他なりません。愛おしい由香里の肌を他人の舌が這いずり、艶かしい蜜液の滴る膣の奥に、欲にまみれた亀頭が幾度も押し入るのです。
清楚の奥に隠れた由香里の淫らさを、鎖のような理性の呪縛から解き放ちたい…
そんな由香里を今まで以上に愛し続けたい…
冬の早い夕暮れが部屋の中を包みます。私は灯りをつけることすら忘れ、岩崎の元へと向かう妻への想いをつのらせたのです。
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