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偽りの日常【01】

私達三人は旅館での朝食を済ませると、他の何処にも寄らずに東京へ帰ることにしました。
岩崎は伊豆の観光を提案しましたが、一夜の出来事を目の当たりにし続けた私は、そのような気持ちにはなれなかったのです。

もちろん、後悔はありませんでした。由香里の私に対する態度がどうであれ、岩崎の精が体の中に染み込んだ彼女は、私の願望と理想を叶えてくれた最愛の妻なのです。

由香里は岩崎の言葉に従うように、車の後ろの席に私と並んで座りました。
彼女は暫く外の景色に虚ろな目を向けていましたが、やがて私にもたれかかりながら眠ってしまったのです。

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無言のまま過ぎる時の中で、私は岩崎と二人だけになったような錯覚を感じていました。それは重苦しく、息が詰まりそうな空間に閉じ込められたような感じです。

妻を寝取られた夫と、寝取った他人…

私の中の卑屈な焦燥が、揺れの収まらない心を内側から掻きむしります。
そして目の前に纏わり付くように、幾度も昨夜の光景が蘇りました。

暗がりの中で、襖を開けて立ちすくみながら見つめた由香里と岩崎が交わる姿…
猛り狂う生身の肉茎に貫かれ、眩い快楽に酔いしれながら漏らす妻の喘ぎ声…

私の前で車を運転している岩崎の精は、今こうしている間にも由香里の中に溶け入っているのです。妻の秘部から連なるように滴り落ちた白い精を思い浮かべながら、込み上げる唾液を幾度も飲み込みました。

熱い迸りを受け入れた妻だけでなく、彼女の膣を満たす精液の潤いに包まれながら果ててしまった私までもが、岩崎の支配する一夜に魅せられてしまったのです。

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「岩崎さん… 申し訳ありませんが、私達を途中の小田原で降ろして下さい。新幹線で帰りますから…」

それは由香里を彼の側から一刻も早く離したい思いからの言葉でした。
それだけではありません。
私自身が彼の側から逃げ出したかったのです。

「今日、奥様と二人きりになってからも『寝取られ』は続きますよ。 由香里さんは、一度目は私を知らずに抱かれた… だけど二度目は知った上で抱かれた。この違いが分かりますか?」

私は寄り添ったまま眠る由香里の手を握り、ルームミラーに写る岩崎の顔から目を逸らしました。喉に詰まった息を飲み込みながら、早くこの密閉された空間から妻の手を引いて外に出ることだけを考えていたのです。

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偽りの日常【02】

岩崎は小田原の駅前に車を停めました。
由香里はもう少し岩崎と一緒にいたかったのかも知れません。それは一夜を共にした男と離れることへの未練というよりも、夫である私と二人きりになることに対する戸惑いなのでしょう。

いくら私自身が望んだこととは言え、夫の傍で他人と愛し合った夜を、妻自身の理性が受け入れるにはもう少しの時間が必要なのです。

私にとっては妻のそのような姿こそ、昨夜の呵責と引き換えに手に入れた二つ目の理想でした。

私と由香里は車のドアを開け、三人きりの閉ざされた空間から外に出ました。
岩崎が私達の前から去る間際、彼と由香里が顔を見合わせて交わした無言の交錯が、鎮まることのない私の焦燥を痛ぶります。

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由香里の奥に秘められた淫らな性を見つめたい…
他人と一つに結ばれる妻の姿を愛したい…

私の理不尽な欲望が引き起こした出来事が、被虐の苛みと葛藤を伴う麻薬のような昂りへと誘います。

駅の中の人混みを歩きながら振り返る由香里の姿は、身震いするような美しさに包まれていました。

夫である私のために、その眩い姿をいつまでも纏って欲しい…
美しさを保つために他人の精が必要なら、昨夜の儀式を繰り返してもいい…

自分でも気付かぬ間に、私はそれらの想いを心の中に幾度も巡らせていました。もしかしたら、愛する妻を他人に与える禁忌の願望を正当化するための、身勝手な言い訳を刻み込んでいたのかも知れません。

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偽りの日常【03】

帰りの新幹線の切符を買うために駅の窓口に並ぶ私の背後から、妻が声をかけました。

「ねえ… 新幹線はやめて各駅停車で帰ろうよ…」

妻の顔を見ながら、理由を問いかける私に彼女は答えます。

「まだ時間もあるし… 急いで帰らなくても… 何処かでゆっくりしよ」

私は頷きました。

由香里の言うとおりだ…
妻との久しぶりの「旅行」じゃないか…
昨夜の出来事があったからこそ、今のこの時を、もう少し大切に過ごそう…

電車に乗り、由香里と並んで座ったまま時折、窓の景色に目を向けました。

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互いに言葉を交わさなくても、相手に心を寄せることで共に交わせる想いがある筈です。
今は夫婦二人で寄り添い、互いを確かめ合う時間が必要なのかも知れません。

由香里と岩崎が結ばれる度に、彼の存在が妻にとって大きなものとなったとしても、夫である私に対する彼女の情愛に変わりはない…
私がそのことを信じなければ、妻が自分自身をも信じられなくなってしまう…

「そうだ 久しぶりに、あの公園に行ってみよう…」

私は半ば強引に由香里を誘いました。
途中の横浜で電車を降り、タクシーで海辺の公園に向かったのです。

そこは由香里と出会って間もない頃、二人で何回か訪れた場所でした。私達は港を行き交う遠くの船を眺め、互いに相手に込めた想いや、時には将来への願いを約束し合ったりしたのです。

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ほんの数年前のことなのに… まるで、ずっと前の出来事に思えてしまう…
もしかしたら、今の妻にとってこの場所は残酷なのかも知れない…
私はどこまで酷い夫なのか…

決してあの頃に戻りたいわけではありません。過去を懐かしんだり、岩崎との事を悔やんだりしているわけでもありません。
ただ、抱き続けた願望と理想が叶った至福を、もっと素直に受け入れたかっただけなのです。

私は、初めて由香里と結ばれた時のことを思い返していました。

反り返る私の強張りを受け入れ、すすり泣くような淡い声を漏らした由香里…
茎に舌を這わせ、欲望にまみれた火照りを温かな口内で包み込んでくれた由香里…

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もちろん、私の恋人となる前に、既に彼女が何人かの男性と性行為を重ねていたであろうとは思っていました。
にもかかわらず、由香里の清純な姿に夢中になった私には、彼女にとって初めての相手となることへの身勝手な願望があったのでしょう。

私は、元彼が幾度も精を放った膣奥への嫉妬を封じたまま、茎に絡む愛液の艶かしさと塗めりに酔いしれました。
由香里と結ばれる悦びとともに、体の奥から突き抜ける射精の快楽に体を震わせながら果てたのです。

当時の私は、自分自身の中に忌むべき禁断の願望が潜んでいるなどとは思ってもいませんでした。

ずっと気付かないままの方がよかったのか…
理想と引き換えに、今まで大切にしていた平穏を永遠に失ってしまったのでは…

ベンチに並んで座る由香里に手を添え、ゆっくりと自分の方に引き寄せました。
妻の中に注がれた他人の精は、もう既に彼女の一部となっている筈です。

今、すぐにでも愛したい…
全てを包み込んで、より深く激しく愛したい…

私は込み上げる感情を抑えながら、真冬の寒さから由香里を守るように、自分の上着を妻に重ねたのです。

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川島 ゆきひと

Author:川島 ゆきひと
夫である私の見ている前で他人と体を重ね合わせ、すべてを受け入れる妻の姿…
夫である私にすらまだ見せたことのない露わな妻の姿…

30代になった私たちが寝取られや夫婦交換で体験した様々な出来事、いろんな方との出会いを、このブログに書きたいと思います。

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