由香里のいない家の中で、私はソファーに座ったまま身動きもせず、壁の一点だけを見つめていました。静寂の中を漂う街の喧騒だけが遠くから聞こえてきます。
無情の寂しさと孤独に耐え切れず、私は携帯を手に取ると、言いしえぬ焦燥を打ち消すように岩崎へメールを送りました。
それは振り子みたいに揺れ動く心の片側を、偽りのない言葉で伝えたものでした。
― 先程、由香里が貴方と逢うために出かけました
― 私の愛する妻です。どうか大切に、優しく接して下さい
― そして、満ち足りたひと時を与えてあげて下さい
衝動に駆られてメールを送ってしまったことに後悔はありません。その中に託した想いは、以前から何度も繰り返し自分に問いかけ、確かめたものなのです。
しばらく経った後、岩崎からの返信が届きました。
― 大切な奥様を見送った川島さんのお気持ちを察しています
― 由香里さんは私にとっても大切な女性です
― 私に愛される姿を想い浮かべ、奥様の帰りをお待ち下さい
― 辛さはやがて悦びによって癒されますから
それは、妻を寝取られる私を気遣いながら、心の中では人の妻を性で支配する至福が隠された文章に思えました。
これからの数時間、岩崎は何の手出しも出来ない私を弄びながら、心ゆくまで妻の体で欲望を満たすのです。
どれだけの時間が経ったことでしょう。暗がりは部屋の隅々まで黒く塗りつぶし、深い静けさだけがその中を漂います。
私は静寂を断ち切るように部屋の明かりを点け、由香里が用意してくれた夕食をテーブルの上に並べました。
食事を箸で口に入れても、胸の奥で不規則な刻みを打つ鼓動が喉を詰まらせます。咽せるのを抑えつけ、息を止めて口の奥に押し込みました。
由香里は少しでも私のために何かをしたくて食事を用意したんだ…
だけど、私のことを気にかけながらも、岩崎と逢う約束に従ったんだ…
今頃、二人は何をしているのでしょう。不貞の交わりの時を過ごす二人にとって、夫である私は禁忌の誘惑を彩るだけの存在なのでしょうか。
岩崎からのメールを息を潜めるように待ちながら、テーブルの上に置いた携帯を見つめ続けました。
私は彼からどのような連絡を欲しがっているのでしょう。孤独な夜を課した自分自身にも判りません。ただ、今の由香里の様子を少しでも知りたかっただけなのです。
私の中に、二人の姿が夢想の光景となって浮かび上がります。
由香里の背後から両腕で抱き寄せ、着衣のボタンをゆっくりと外す岩崎…
唇を重ね合い、互いの気持ちを確かめるように舌を絡める二人…
耳元で囁く岩崎の言葉に小さく頷き、彼の背にまわした手でシャツを握りしめる由香里…
それらは妄想などではなく、今この瞬間にも結ばれようとしている二人の姿なのです。
目眩がする程の嫉妬が、張り裂けそうな胸を激しく打ちのめしました。早まる鼓動は由香里への情愛を昂らせ、下腹部の熱い固まりが、押さえ付けられた先端をもたげます。火照る膨らみは行き場の無い苦しさにもがき、遠く離れた由香里の姿を愛しむように脈動を繰り返しました。
岩崎のメールを知らせる着信音が再び鳴ります。私は慌てて携帯を手に取りました。メールに本文は無く、一枚の写真だけが添えられています。
それはベットの脇にある椅子に置かれた妻の衣服… 彼女が家を出た時、身に付けていたスカートの写真だったのです。
今、二人は愛し合っているんだ…
あの男の狂おしい茎が、艶かしい潤いに満たされた由香里の秘部を愛しているんだ…
私は欲情の板挟に堪え切れず、誰もいない部屋の中でベルトを外し、硬直した勃起を露わにしました。鼓動とともに上下に揺れ動く亀頭から、唾液のように透明な粘液が滴っています。切ない息遣いとともに、膨れ上がった肉茎は痛いほどに猛りを増していきました。
ああ… 由香里…
全ての責めを私に負わせていいんだから…
私は、愛する妻が他人に寝取られる姿を想い、勃起した茎から悦びの雫を垂らす夫なんだ…
現実を受け入れた証として、私は震える指先で空のメールを岩崎へ送りました。そして握り締めた携帯を持ったまま、ふらつく足取りで真っ暗な寝室の中に入ったのです。
>> 同じジャンルのブログ集(FC2ランキング)>> アダルト向けのブログ集(ADブログランキング)