言葉が続かず、沈黙してしまった私を庇うかのように、岩崎は腕時計を見ながら「そろそろ店に戻らなくては」と呟きました。
「お忙しいのに、時間を頂いてすみません」
自分で感じるよりも時間の経過が早いのか、長居をしてしまったようです。
精算を済ませ店の外に出ました。先程よりも、勤め帰りの人影は、めっきり少なくなっていました。
「どのように奥様に打ち明けるかは、ゆっくりと考えて下さい。時間にリミットはありませんから。その前に、貴方自身が自分に納得のいく気持ちの整理を付けることが大切です」
岩崎はそう言うと、私に携帯電話の番号とメールアドレスを教えました。
私も岩崎に伝えようとすると、「貴方からの電話やメールがあれば、それに返信出来ますから大丈夫です。その方が私を気にせずに、ゆっくりと気持ちを整理出来るでしょ」と応え、店に向かって歩き出しました。
私は思わず岩崎を呼び止めました。
「上手く言えませんが、最初は岩崎さんを、ただ単に他人の奥さんを抱きたいだけの人かと思っていました。それだけじゃ無くて、気遣いのある方なんですね」
告白を聞いてくれた岩崎に、私は素直な本音を漏らしました。
「いや、私は貴方の奥さんを写真で見て、一目惚れしただけですよ」と笑いながら応えると
「まあ… 人にも言われますが、お節介が好きなのかな…」と真顔で考え込んだのです。
そんなやり取りの後、岩崎と別れて私は駅へと向かいました。
巨大なターミナル駅は、私の苦悩とは無関係に人が流れていきます。
この中で、私自身の性的願望が招いた板挟みと同じ境遇の人はいるのだろうか…
いる筈なんてないかも… 私だけなんだ…
そんなことを考えながら、家に向かう電車に乗り込みました。
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