ドアをノックしてから暫くの静寂の後、内側からロックが外されました。
「眠ってましたか」
「ん… 寝たような、起きているような… その繰り返しです」
岩崎は私の問いかけに答えながら、部屋の中に招き入れました。
枕元の灯りだけがついた薄暗い部屋の中で、私はベットの脇に腰を落としました。
先程の岩崎と妻の交わりが鮮やかに脳裏に蘇ります。
この男はもはや妻にとって、他人の一線を越えてしまったのです。結婚以来、私だけが味わった妻の肌を思うがままにし、私以上の悦びを彼女に与えたのです。
今、その男と向き合い、冷静に接する自分に対し驚きを感じていました。
あまりに現実から乖離したあの光景が、私の中の実感を麻痺させていたのだと思います。
「朝まで由香里と二人きりで過ごしませんか… もちろん、彼女にもそう伝えています」
「判りました… 正直に言うと、実はあれからずっと不安だったのです。もし呼ばれなかったらと…」
岩崎は安堵の混じった声で応えました。
「川島さんの許可がもう少し遅かったら、自分自身で処理をするつもりでした。奥様との一時は余りにも素晴らしかったですから…」
今思えば私はその言葉に、嫉妬や恥辱とは全く別の、他人が妻の虜となることで満たされる屈折した優越を感じていたのかも知れません。
岩崎は髪を整えると、小さく息を飲み込んで静かに部屋を出ていきました。
妻は彼をどのように部屋へ迎え入れるのだろう…
夫のいない二人きりの空間で、特別な存在となったばかりの他人と、どのように愛し合うのだろう…
私は、妻を岩崎と二人だけすることが、秘めていた願望を受け入れてくれた由香里への償いだと信じたのです。
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