帰りの新幹線の切符を買うために駅の窓口に並ぶ私の背後から、妻が声をかけました。
「ねえ… 新幹線はやめて各駅停車で帰ろうよ…」
妻の顔を見ながら、理由を問いかける私に彼女は答えます。
「まだ時間もあるし… 急いで帰らなくても… 何処かでゆっくりしよ」
私は頷きました。
由香里の言うとおりだ…
妻との久しぶりの「旅行」じゃないか…
昨夜の出来事があったからこそ、今のこの時を、もう少し大切に過ごそう…
電車に乗り、由香里と並んで座ったまま時折、窓の景色に目を向けました。
互いに言葉を交わさなくても、相手に心を寄せることで共に交わせる想いがある筈です。
今は夫婦二人で寄り添い、互いを確かめ合う時間が必要なのかも知れません。
由香里と岩崎が結ばれる度に、彼の存在が妻にとって大きなものとなったとしても、夫である私に対する彼女の情愛に変わりはない…
私がそのことを信じなければ、妻が自分自身をも信じられなくなってしまう…
「そうだ 久しぶりに、あの公園に行ってみよう…」
私は半ば強引に由香里を誘いました。
途中の横浜で電車を降り、タクシーで海辺の公園に向かったのです。
そこは由香里と出会って間もない頃、二人で何回か訪れた場所でした。私達は港を行き交う遠くの船を眺め、互いに相手に込めた想いや、時には将来への願いを約束し合ったりしたのです。
ほんの数年前のことなのに… まるで、ずっと前の出来事に思えてしまう…
もしかしたら、今の妻にとってこの場所は残酷なのかも知れない…
私はどこまで酷い夫なのか…
決してあの頃に戻りたいわけではありません。過去を懐かしんだり、岩崎との事を悔やんだりしているわけでもありません。
ただ、抱き続けた願望と理想が叶った至福を、もっと素直に受け入れたかっただけなのです。
私は、初めて由香里と結ばれた時のことを思い返していました。
反り返る私の強張りを受け入れ、すすり泣くような淡い声を漏らした由香里…
茎に舌を這わせ、欲望にまみれた火照りを温かな口内で包み込んでくれた由香里…
もちろん、私の恋人となる前に、既に彼女が何人かの男性と性行為を重ねていたであろうとは思っていました。
にもかかわらず、由香里の清純な姿に夢中になった私には、彼女にとって初めての相手となることへの身勝手な願望があったのでしょう。
私は、元彼が幾度も精を放った膣奥への嫉妬を封じたまま、茎に絡む愛液の艶かしさと塗めりに酔いしれました。
由香里と結ばれる悦びとともに、体の奥から突き抜ける射精の快楽に体を震わせながら果てたのです。
当時の私は、自分自身の中に忌むべき禁断の願望が潜んでいるなどとは思ってもいませんでした。
ずっと気付かないままの方がよかったのか…
理想と引き換えに、今まで大切にしていた平穏を永遠に失ってしまったのでは…
ベンチに並んで座る由香里に手を添え、ゆっくりと自分の方に引き寄せました。
妻の中に注がれた他人の精は、もう既に彼女の一部となっている筈です。
今、すぐにでも愛したい…
全てを包み込んで、より深く激しく愛したい…
私は込み上げる感情を抑えながら、真冬の寒さから由香里を守るように、自分の上着を妻に重ねたのです。
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