岩崎は小田原の駅前に車を停めました。
由香里はもう少し岩崎と一緒にいたかったのかも知れません。それは一夜を共にした男と離れることへの未練というよりも、夫である私と二人きりになることに対する戸惑いなのでしょう。
いくら私自身が望んだこととは言え、夫の傍で他人と愛し合った夜を、妻自身の理性が受け入れるにはもう少しの時間が必要なのです。
私にとっては妻のそのような姿こそ、昨夜の呵責と引き換えに手に入れた二つ目の理想でした。
私と由香里は車のドアを開け、三人きりの閉ざされた空間から外に出ました。
岩崎が私達の前から去る間際、彼と由香里が顔を見合わせて交わした無言の交錯が、鎮まることのない私の焦燥を痛ぶります。
由香里の奥に秘められた淫らな性を見つめたい…
他人と一つに結ばれる妻の姿を愛したい…
私の理不尽な欲望が引き起こした出来事が、被虐の苛みと葛藤を伴う麻薬のような昂りへと誘います。
駅の中の人混みを歩きながら振り返る由香里の姿は、身震いするような美しさに包まれていました。
夫である私のために、その眩い姿をいつまでも纏って欲しい…
美しさを保つために他人の精が必要なら、昨夜の儀式を繰り返してもいい…
自分でも気付かぬ間に、私はそれらの想いを心の中に幾度も巡らせていました。もしかしたら、愛する妻を他人に与える禁忌の願望を正当化するための、身勝手な言い訳を刻み込んでいたのかも知れません。
>> 同じジャンルのブログ集(FC2ランキング)>> アダルト向けのブログ集(ADブログランキング)