「お相手した中には、夫婦交換が初めての方もいたのですか?」
私は会話の横から、黒シャツの男に聞き返しました。思わず口から漏れた質問に、周りの友人達が目線を私に向けました。
その男は、椅子に座ったまま寝返りを打つかのような仕草をしながら私を見ると
「ま… 経験が有っても無くても、初めての相手なら初めてみたいなもん… かな」と独り言のように答えたのです。
「お前、なにを真顔で聞いてるんだよ」
私の友人が、場の会話を元に戻そうと間に言葉を挟みました。
「いや… ほら、世の中にはそんな夫婦がいるって聞くからさ」
私は平静を装いながら笑って応えました。
「お前の奥さん、美人なんだから他の女には目がいかないはずだろ」
「今も新婚さんみたいに毎晩かな?」
友人達の冷やかしを適当にかわしながら、心の中で先ほどの黒シャツの言葉を思い返していました。
自分とは縁の無い世界での出来事と思っていた夫婦交換が、現実の経験者を目の前にすることで、単なる絵空事ではないことのリアルさを感じていました。
何処かの亭主が、奥さんをこの黒シャツに抱かせたんだ…
黒シャツが旦那の目の前で奥さんの中に…
もしも… その奥さんが私の妻だったら…
一瞬、頭の中を霰もない妄想がよぎりました。
しかし、それまで私が乾いた欲望を癒やすかように描いた妄想とは異なりました。
妻の相手が、私の意図しない間に現実の存在である黒シャツに塗り替えられていたのです。
予告もなくこみ上げたリアル感を振り払い、深呼吸をするかのように酒に口を付けました。
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