岩崎は煙草の火を消してから、周りを何気なく見渡し、私に耳打ちするように話しました。
「私を奥様のお相手に選んで下さって光栄です。昨日、写真を見せて頂いただけですが、素敵な奥様だということはすぐに判りましたよ」
私は少しの優越感と緊張のほぐれから、謙遜した笑みを浮かべました。
「殆どの男は、あのような人妻を抱いてみたいと思う筈です。もちろん、私もです」
身を乗り出して、岩崎は言葉を続けました。
「ただ… 川島さんは奥様にこの事を、まだ何も話していらっしゃいませんよね…」
私は無言で頷き、岩崎の顔を見上げました。
それが出来たら、今までこんなに悩みはしない…
そう訴えかける目をしていたと思います。
「当たり前のことですが、夫婦交換の前提は御主人と奥様、両方の同意と理解です。それが無ければ、夫婦交換をしてはなりません」
言われるまでもなく、私もそれは重々承知しています。
妻が自ら他人の男に体を差し出し、経験したことのない未知の悦楽に浸る姿… 私が欲しいのは、そんな妻の姿なのです。
決して妻に無理強いしようとは思いません。
それでは全く意味がないですし、何よりも決して消えない心の傷を彼女に与えてしまうのですから。
私は自分の気持ちを岩崎に伝えました。
「それを聞いて安心しました。川島さんが奥様を大切にされていることがわかります。」
椅子の背もたれに体を預けながら、岩崎は小さく二度頷きました。
「私は妻に何と言って気持ちを伝えたらいいんでしょう…」
行き場の無い私の独り言に、岩崎は少し考えてから
「突き放す訳ではありませんが、それはやはり、夫である貴方自身で考えて、自分の言葉で奥様に打ち明けることだと思いますよ。奥様を一番御存知なのは貴方ですし、奥様も貴方の気持ちが込められた告白だからこそ、受け入れることが出来るのですから」と応えました。
確かに、岩崎の言うとおりです。私の本当の気持ちが込められていない、他人の入れ知恵の言葉で妻の心を動かす事など不可能なのです。
思い返せば、私も以前からその事は理解していた筈です。
だからこそ、四面楚歌のような圧迫と閉塞を感じ続けていたのです。これは妻に対して私のような愛情を抱く夫なら、誰しも逃れることは出来ないのでしょう。
その最も大切な事を、ここ最近の心の動揺で忘れてしまっていたのかも知れません。
岩崎の率直な言葉を反芻しながら、空になったままのコーヒーカップを眺めていました。
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