受付を済ませた私達3人は、和服姿の中居に部屋へと案内されました。
3室に仕切られた大きな和風の部屋は畳の香りが漂い、窓からは日の暮れた冬の海が見えます。
「落ち着いた素敵な部屋でしょう。漁船の灯りも遠くに見えますよ」
岩崎は妻を傍らに呼び寄せ、外の風景を一緒に眺めています。
「もうすぐ食事の用意をしますから。浴衣はこちらです、お好きなものをどうぞ」
中居は木の箱に入った浴衣を押入から出しました。
部屋の外には、この部屋専用の露天風呂があります。竹の柵で周りの冷たい空気から遮られた空間は、温泉と檜の温かな香りで満たされています。
「お客様だけの露天風呂ですから、いつでも御自由にお使い下さい」
中居の言葉に、妻は無邪気な笑みを浮かべています。
二人の様子を横に見ながら、私は奥の寝室を確かめました。
今夜、妻と岩崎が淫らな行為にふけるその空間には、山水画の掛け軸と生け花が飾られています。
部屋の隅には行灯が置かれ、微かな光が閉ざされた四方を柔らかに照らしています。
細やかに手の入った淡い彩りの花の前で、妻である由香里は他人と交わり、その体の奥深くに精液を注がれるのです。器に捧げられた可憐な切り花は、清楚から淫らへと変わる妻の姿を、艶めかしく浮き立たせてくれるのでしょうか。
私にとって、愛する妻の寝取られに、一度目も二度目もありません。彼女と育んだ数年間の出来事と想いが、他人の欲望と精によって塗り替えられてしまうのです。
駆け巡る様々な感情から逃れるように寝室から出る私の姿を、由香里は無言のまま見つめていました。
湧き出る怯えの中に広がる背徳への願望…
明日の朝、妻の心を再び取り返すことへの不安…
今しがた目にした生け花が、残像のように脳裏を幾度も横切ります。私には、まるで妻の全てを他人に捧げる儀式のために飾られた花に思えたのです。
>> 同じジャンルのブログ集(FC2ランキング)>> アダルト向けのブログ集(ADブログランキング)