私は誰もいない露天の湯の片隅で、由香里を想いながら茎を握る手の動きを早めました。
妻に対する様々な感情が振り子のように揺れ動きます。それは後悔というよりも、新たな領域へ踏み出すことへの恐れなのでしょうか。
時折、耳に届く微かな物音に手の動きを止め、息を潜めます。
自分の手で快楽を味わう私の惨めな姿を、由香里が見たら何と感じるのでしょう。
他人に妻を与え、二人が交わる姿を想い描きながら自慰に浸る夫…
射精を堪えながら、未練たらしく妻の名を口にする夫…
失望と軽蔑の目で見られたとしても、そのことが妻が感じるであろう罪悪感から彼女を遠ざけてくれるなら、私はそれでもよいと思ったのです。
外の冷気で白く漂う息を押し殺し、反り返った肉茎から手を離しました。精の放ちを辛うじて堪えた亀頭の先端は、妻への想いが透明な粘液となって濡れ光ります。
妻の側にいたい、そして彼女が果てる姿を見届けたい…
二人の交わる姿が背徳にまみれた行為であればある程、私が今まで求め続けた理想の妻に近づくのです。
私は湯から出ると、はやる気持ちを抑えながら浴衣を纏いました。
冬の夜の冷たい空気が火照る身体を癒やすように包み込みます。
薄暗い渡り廊下を通り、突き当たりにあるエレベーターのボタンを、汗ばむ指先で押しました。
ドアの開く機械音が無の静寂を打ち消します。
私は胸の鼓動に駆り立てられるように、岩崎の一夜妻となった由香里の元へと向かったのです。
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