一夜妻として岩崎と結ばれ合った由香里にとって、夫と二人だけの静寂は辛い時間だったのかも知れません。
10分程が過ぎて、岩崎が露天風呂から帰ってきました。部屋の中に入り、交わす言葉の途切れた私達に声をかけます。
「由香里さんの写真を撮っていたんですね…」
彼は私の傍らにあるカメラを見つけると、手に取って撮影したばかりの写真を再生します。
由香里は慌ててそれを止めようとしましたが、私は彼女を制しました。
「綺麗ですね… 夫である川島さんの想いが伝わりますよ…」
岩崎はカメラのモニターに映る私の「妻」を見つめます。
「いつか、私と由香里さんが一夜の夫婦として愛し合っている姿も写真に残して下さい。川島さんが、その写真を後で見る、見ないはご自由にして構いませんから」
それは私に対する願いなのか、指図なのか…
妻は黙ったまま何も言いません。
もしかしたら、既に岩崎は由香里との行為を写真として残したいことを彼女に打ち明けているのだろうか…
まさか私の知らない間に、二人だけで約束しているのだろうか…
妻を他人に与えておきながら、様々な猜疑が私の心を揺さぶります。
「川島さん、せっかくの内湯にまだ入ってないでしょう。よかったら由香里さんと一緒に入ってはどうですか」
なぜ、今… 由香里だって着替えが済んでいるのに…
しかし私は、岩崎の意図を探ることはしませんでした。
妻にとって岩崎との行為は、前回の出来事も含めて二度目になります。彼女がその事に対する様々な葛藤を鎮めるには、私と二人だけになる時間がもう少しだけ必要に思えたのです。
由香里は、日が差し込む外の露天風呂は他から見えること、もう既に着替えを済ませたことを理由に一度は断わりましたが、再び岩崎に促されて頷きました。
岩崎に対する妻の従順さに、私は少しばかりの焦燥を感じながら、自分の浴衣を脱いだのです。
全裸になった私は、由香里を背後から抱きしめるように手を回し、ゆっくりと妻の衣服を一枚づつ脱がせました。部屋に差し込む光の中で、岩崎を目の前にしながら、愛する妻の肌を露わにしたのです。
彼が闇の中で幾度も精を放った由香里の体を、朝の日差しに照らされた中で見つめて欲しい…
一夜妻としてではなく、私の妻としての彼女を見つめて欲しい…
もしかしたら、由香里も心の中では岩崎の眼差しが欲しかったのかも知れません。目を閉じ、唇を噛み締め、秘部を隠すように手を添えながら体を彼に向けたのです。
それはあたかも他人の妻となった一夜に別れを告げ、夫である私の元に帰る儀式であるかのように思ました。
岩崎は黙ったまま目を細め、至福の表情で由香里を見つめます。二人だけが交わす無言の繋がりに、私が入り込む余地は何処にも無かったのです。
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