私にとって妻の体を岩崎に託すことは、決して失敗の許されない大切な企てです。
大まかな道筋を岩崎に示してもらう以外に、他に頼るべきところは無いのです。
「何を確かめ、どう決めるべきか… 教えてくれますか」
「判りました」
岩崎は一旦、椅子に深く腰を掛けてから、再び身を乗り出しました。
「夫婦交換の形に『寝取られ』ってあるの、知ってます? 自分の奥様が他人とセックスする姿を、傍で見ることに悦びを感じることですが…」
岩崎は話を続けました。
「自分自身は他人の奥様とセックスしなくても、妻が他人に抱かれる姿を見ることで、それ以上の嫉妬と羨みにまみれた性的快感を味わうんです…」
「川島さんは… 夫婦交換の中でも『寝取られ』を希望していると理解していいですか?」
私は岩崎を見つめたまま、首元だけで頷きました。
「最初に話を伺った時から、川島さんが求めていらっしゃるのは『寝取られ』かなと思っていました。そのような願望を持っている人は、意外と多いんです。殆どの人はその事に口を噤むか、自分で認めようとしないから特別なものに思われるだけなんです」
今まで、私の性的趣向は決して他人には言えない、特殊なものであるとは思っていました。
そのために、屈折した葛藤や逃避、板挟みのような苦しみに悩んできたのです。
岩崎の話はそれをいとも簡単に分類し、数あるフェチズムの中のひとつとして存在することを証言しているかのようでした。
「もしよろしければ、川島さんへのパートナーとして、27才の素敵な女性を連れて行くことも出来ますが… もちろん、別の日に奥様に内緒でも構いません」
私は無意識の内に、岩崎の提案に反応してしまったのでしょう。
「川島さんは正直だ、そうでなくては」
岩崎は無遠慮な笑いを浮かべました。
「でも… 奥様が他人に抱かれる姿を見ることが最大の願いなら… その件は別の機会にしましょう。最初は『寝取られ』だけを遂げるようにした方が、奥様の心理的な負担も軽いと思いますから」
「判りました。今の私はそれだけでも… 『寝取られ』だけでも充分です」
私は知らず知らずのうちに、岩崎が示すプランに身を乗り出すように聞き入っていました。
汚れた願望とさえ思えた自分の性癖が、人によっては密かに心の内に抱えることの有る欲望であることに気付いたからでしょうか。
蔑まれた願いであればあるほど、叶えられる悦びの虜になっていくのだとさえ思えたのです。
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