3人だけのエレベーターの中は、8階までの僅かな時間がループするかのように長く感じました。
妻と私は、フロアを示す表示を見上げながら、閉ざされた空間の中から解放されるのを無言で待ちました。
無機質な電子音とともに扉が開くと、淡い照明に照らされた無音の廊下が続いています。
岩崎の後に続くように、私と妻は部屋へと歩きました。
愛する妻が他人である岩崎と交わり、その全てを受け入れる場所…
恋い焦がれた妻の露わな姿を目の当たりにする場所…
その部屋のドアに岩崎から渡された鍵を差し込み、微かに震える手で扉を開けたのです。
奥の窓際に、ベージュの灯りで艶めかしく照らされた2つのベットが並んで置かれていました。
張りつめたシーツの白さが、薄暗い中にありながら目に突き刺さるようです。
2つのベットの内、1つは妻と岩崎が愛し合うためのもの…
もう1つは、結ばれながらお互いを求め合う2人の姿を、傍らで私が見つめるためのものです。
岩崎のアドバイスもあり、あえてそのためにツインの部屋を予約したのでした。
私と妻は無言のまま、ベットの傍らに立ち竦んでいました。
何かをしゃべらなきゃ…
焦りとは裏腹に、言葉が何も口から出ません。
妻にとっても否応なしに突き付けられた現実… 私の見ている前で、この白い布の上で他人の愛と欲を受け入れることに対する最後の迷いが込み上げてきたのだと思います。
さっきの店の中で見せた彼女の笑顔は既に消え失せていました。
今まで二人で育んだ夫婦の関係が、これからの出来事によって全て失うかも知れないことに怖気づいたのだと思います。先日までの私がそうであったように…
「川島さんたちは、暫らくここで休んでいて下さい。私は隣の自分の部屋に荷物を置いてきますから… 用意が出来たら電話で呼んで下さい」
岩崎はそう言うと、私達を残して前もって予約した隣の部屋へ行きました。
必ず2人きりになる時間が必要…
それが先日の「打ち合わせ」で、岩崎が私へアドバイスしてくれたことでした。
妻が他人に抱かれる直前… そして全てが終わった後…
彼女の心に残った迷いを優しく包み込み、愛する気持ちを再確認するための2人だけの時間…
私は立ち竦んだまま彼女を強く抱きしめ、激しく唇を求めました。
妻の肌から微かに漂う淡い香りに酔いしれながら…
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