翌朝、朝食をとりながら、妻から昨夜の「同級会」について、いろいろ聞かれました。
誰と誰が来たのか…
何処の店に行って何を食べたのか…
どんな話をしたのか…
妻はまるで、夫婦の会話を広げる足掛かりを探しているかのようです。しかし、私は意味のない相槌を返し、なるべく妻と目線が合うのを避けてしまいました。
そこそこに食事を済ませ、自室に鞄を取りに行くと、岩崎からの名刺が机の上に置いたままになっていました。
昨夜の痕跡に妻への後ろめたさを感じるためか、慌てて名刺を鞄に入れると、いつもどおりに妻に出勤の挨拶をして家を出ました。
妻もOLとして働いていますが、出勤時間は私よりも少し後のため、一緒に家を出ることは殆どありません。
いつもはその事を、少し物足りなく寂しく感じていたのですが、今日だけは息苦しさから解かれた気持ちでした。
電車の中でも、会社に着いてからも、昨日の出来事が追想のように繰り返し蘇ります。
どうかしてる… 妻を夫婦交換に… そんなことは妄想の中だけでのことなんだ…
冷静な判断力を失いかけている自分自身を取り戻そうと、大きく息を吸い込みました。
考えてみれば…
岩崎は俺に、はっきりと夫婦交換を持ちかけたわけじゃない…
ただ、奥さんと一緒に店に来ないかと誘っただけじゃないか?…
普通によくあることだろ…
私は自分に、岩崎を夫婦交換の経験者として必要以上に意識しすぎているんだと言い聞かせました。
単に酒の席で一緒になった縁で、よければ妻と同伴で店に来てくれという、一種の社交辞令と思うようにしたのです。
じゃあ、なぜあの時、わざわざ俺だけを呼び止めて名刺を渡したんだ…
振り子のように揺れ動き、ざわめく心を押さえつけてる間にも、知らぬ間にもう一人の自分の存在が大きくなっていくのです。
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