3日の間、私の願いに対する妻の答えを待つことになりました。
胸の奥深くに秘めた、処理する術のない膨らむだけの欲望に痛みを感じていた私には、その日を待つことは苦ではありませんでした。妻に打ち明けたことで、息苦しさから解放され本来の自分に戻れたようにすら感じられたのです。でも、それは私が抱えていた苦悩を妻に渡しただけのことかも知れません。
翌日からの妻は、夫である私からみても、普段とは変わらないように見えました。
いつものように食事を作り、いつものように私の出勤を見送ってから自分も会社に出かけたのです。
今思えば、きっと何も変わらないように振る舞うことだけが、彼女自身で平静を保つ只ひとつの方法だったのかも知れません。
「告白」から二日たった夜、何日ぶりかで妻を食事に誘いました。私が望む答えを妻から引き出すための機嫌取りでも、打ちひしがれた彼女哀れんだからでもありません。
ただ、家から離れた場所で二人の時間を過ごしたかったからです。最近、二人の間に隙間のようなすれ違いが増えた気がしていたので、私自身が寂しく感じていたからということもあります。
でも本当は、私自身の自責の気持ちを和らげたかったのかも。
食事が終わって一緒に家に帰り、リビングで暫らく過ごしてから寝室に入りました。
ここ数日、夫婦の交わりは途絶えていました。
私の様子の変化と、一昨日の件が原因なのははっきりしています。
明日には妻の答えがあるのだろうか…
もし、妻が拒んだ場合、元の関係に戻れるのだろうか…
いや、戻すのが私の責任なんだ…
そんなことを考えながら寝付けないまま、暗い天井を眺めながら、何度もそのことを繰り返し考えていました。
私の脇で背を向けたまま眠っている妻の華奢な肩に手をかけようとしましたが、思いとどまりました。
「眠れないの?…」
「ん… いや… うとうとしてた」
妻がいきなり振り向き、私に声をかけました。
「あなた… 今まで私のことを真面目だって思ってきたでしょ」
「え…」
突然の言葉に、思わず応えに戸惑いました。
一瞬、問いかけの意味が判らなかったのです。
「真面目って… 男に対して真面目っていう意味?」
「そう…」
私には、妻が何の意図が有ってそのようなことを突然聞くのか、妻への答えを準備するよりも、彼女の真意を知りたくて顔を覗き込みました。
「あなた、私の前の男性経験を3人だって思っているでしょ」
「違うの?」
「どうして3人って思ったの? 私は3人って言ったことはないよ」
「だって… 俺の前に付き合ってた男は3人って言ったじゃないか」
「恋人とだけしかセックスしないと思ってた? 私のことを真面目だって思ってたからでしょ」
思わぬ妻の告白に、私は息を呑みこみました。
「じゃあ… じゃあ何人と? 何人とセックスしたの?」
妻は、私が驚いてその質問をすることを待っていたかのように、ゆっくりと落ち着いた口調で答えたのです。
「私と他の人とのセックスが見たい、あなたがする質問じゃないよね」
妻の言葉に、私の背中は次第に火照るような熱を帯び、汗がうっすらと浮き出てきたのです。
今まで知らなかった妻の過去に動揺する私に、彼女は言葉を続けました。
「でも、遊びでセックスしたわけじゃないの。それは信じてね」
無言のまま私は頷きました。
「恋人じゃない人とは4人… だから、あなたを入れて8人…」
妻のかすかな声での告白は、耳の奥深くまで突き刺さるようでした。
私は妻から目線を反らし、真上を見つめながら自分に言い聞かせる言葉を探していました。
恋人じゃなくても、好きな相手だったら… 好きな相手とだったら、私が思っている妻とは変わらないんだ…
自分だって、恋人以外の人とセックスしたじゃないか…
「驚いた?…」
「ううん… 俺が勝手に由香里を決めつけていたんだね…」
「そういうこと。だけど本当の私は、あなたが思っているとおりの私だって信じていいから…」
私は小さい声で頷くと、妻の肩に手を廻し、自分の方に抱き寄せました。
「そんなことで、由香里を好きな気持ちが変わったりしないよ」
妻の告白に動揺した自分自身が不甲斐なく思えました。
今まで彼女が秘めていたことを、何故、今になって口にしたのかも、私にとってはどうでもいいことでした。
ただ、妻に対する過去を私が勝手に決め付け、それを裏切ることのないように妻に仕向けていたことに後悔したのです。
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